ずっと話題になっていたので気になっていたが、Kindle Unlimitedにあったので読んだ。 小説は、自分が今どんなことに関心を持ち、何に心を動かされるのかという、自分の精神的なコンディションや人生の段階をチェックするのに良いツールだと思う。今回この本を読んで一番感じたのは、かつての自分にとってはかなり重要だった「人間関係の機微」というテーマに、以前ほど関心を寄せられなくなっているということだった。 それは、自分が以前より精神的に落ち着き、自分なりの地盤ができてきた証拠でもあるのだと思う。他人のちょっとした言動や、人間関係の揺れにそれほど心を持っていかれなくなった。一方で、年齢を重ねるにつれて、そうした微細なものを受け取る感受性そのものが少し失われてきたのではないか、と自分を顧みるところもあった。 元も子もないかもしれないが、個人的には、周囲にどう思われようとずぶとく生きていく芦川さんの方が好ましかった。むしろ、自分自身の満たされなさを抱えながら、芦川さんの一挙一動を観察してはあれこれと思いを巡らせる二谷と押尾には、あまり良い印象を持てなかった。 ごく小さな職場という「箱庭」の中だけで、これだけ人間関係が細かく動いていくところは面白かった。また、食べ物が単なる食事ではなく、セルフケアや「自分を大切にすること」と結びつけて描かれている点も興味深い。何を食べるか、どう食べるかというごく日常的な行為に、その人の生き方や他者との距離感が滲み出てくるところは、この小説ならではだと思った。 ただ、作品として面白くなかったというより、こうした人間関係の機微そのものが、今の自分には以前ほど刺さらなかった。そのこと自体が、自分が今どこにいるのかを少し考えさせてくれた、という意味で面白い読書だった。
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