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昭和の日本統治下の台湾を舞台に、日本人作家の青山千鶴子と、通訳を務める王千鶴が鉄道で台湾各地を旅する物語。 とにかく食べ物の描写が楽しい。大食漢で、常に新しい味を探している青山が、千鶴に案内されながら土地ごとの料理を次々と味わっていく。観光客向けの定番料理だけでなく、台湾各地の郷土料理や、当時の食文化が細かく登場するので、読んでいると実際に台湾を旅して食べ歩いているような気分になる。 一方で、一緒に旅をする王千鶴はどこか謎めいている。学校教師でありながら複数の言語に通じ、料理や歴史、西洋文化にも驚くほど詳しい。青山との距離が少しずつ縮まっていく様子も含め、グルメ、鉄道、歴史、そして百合的な関係性が同居しているのがこの作品の独特なところだと思う。 物語の後半では、単なる旅行記やグルメ小説では終わらず、「異文化を理解するとはどういうことか」「善意や好奇心の中にも、自分では気づかない傲慢さが入り込むのではないか」というテーマへ踏み込んでいく。 テーマそのものに強い目新しさがあるわけではなく、そこへたどり着くまでがかなり長いので、途中の食や旅、二人の関係を楽しめるかどうかで評価は分かれそう。一方で、グルメ、鉄道、百合、台湾史、植民地主義という要素を一つの物語にまとめた作品はかなり独特で、新しいジャンルを切り開いているように感じた。こうした作品が台湾の外でも広く読まれ、国際的に評価されていることは喜ばしい。 また、台湾料理の細かな描写や、人間関係における含みの多いコミュニケーションを英語へ移すのは相当に難しかったはず。翻訳者の功績も含めての国際ブッカー賞受賞だったのだと思う。
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